患者さんやホームページを読んだ方からの質問
前の医院では虫歯だといわれたのに、今回はなにもしなくても大丈夫と言われたりすると、とても疑問に思われることと思います。
虫歯を例に話します。
虫歯を扱うときに一番難しいのは、「診断」です。特に削るか?削らないか?の判断です。
私の経験上、それは歯科大学でどのような教育を受けてきたか、その歯科医師がどのような教育を受けてきたかによって、大きく異なります。
私は歯はなるべく削らないように、控えめ、控えめに診るような教育を受けてきました。他の歯科医院の先生に比べると臆病すぎるかもしれませんが、その代わり定期的なチェックに力を入れます(ただし痛みや知覚過敏などの症状があれば別です)。
それで大きなトラブルになった経験は、幸いにもほとんどありませんし、もう何年も経過観察とクリーニングだけで過ごされている患者さんもいらっしゃいます。
日本で削らなくともよい虫歯の診断法が認知され始めたのは、ごく最近です。北欧の歯科大学で受けた虫歯の教育では、もう学生診療室のレベルでこれが徹底されていたのには、驚きました。
私を指導してくれた教官がこう仰っていたのが、いまでもとても印象に残っています。
「削るかどうか迷ったら、半年待ちなさい」
予防が発達した国では半年くらい放置していても、虫歯が進行することはほとんどないという経験からです。
半年後に先延ばしにして、もし大きな治療が必要になるような場合は、その時に治療しても結局は大きな治療が必要になってしまう事実があります。
それと虫歯の進行のスピードは個人的な原因と同時に、その人が属する集団(家族、職種、地域、国など)にも大きな影響を受けることが知られています。
大昔、虫歯の洪水であった時代と、現代では虫歯の進むスピードも大きく違うのです。最近の日本もだんだん北欧に近づいてきました。
診断は科学データで決められるものではなく、そこに歯科医師の考え方、地域の特性、個人の事情など、じつに様々なことを総合的に判断して下されますので、歯科医師によってバラバラであるのは、避けがたい事実です。
一番大切なのは、皆さんが説明を聞いて「納得すること」だと思います。