マウスリンス

予防コラム

「お口クチュクチュXXX」とか、「歯周病菌と闘うXX」なんてフレーズはテレビでもよく聞くが、あれって専門家の目から見てどうなのだろうか?毎日のようにテレビのCMに流されているし、コンビニでも必ず見かける。

宇宙の法則では、作用するところには必ず反作用がおこる。物事でプラスに働くものは、かならずその裏で同時にマイナスにも働く。特に化学物質がいい例であろう。

まったく副作用や害のない薬があれば、それは逆にまったく益にもならないものだと思う。人間の体にケミカルなものを作用させる以上、これは絶対に避けられないものである。もし使うならば、メリットがデメリットを上回らなければならない。

では市販の洗口剤を使う目的ってなんであろう。おそらくはほとんどの人が理解しないで、なんとなく「口の中がきれいになりそう」とか「臭いがするといけないから」いう理由で使われていることが多いのではないかと思う。

スウェーデンでの話で恐縮だが、僕が受けた教育では、マウスリンスの使用に関しそこらへんがきちっと明確にされていた。

ひとつは何らかの原因で歯磨きができない人(手術直後など)に短期間用いるため。これは化学的(ケミカル)プラークコントロールといって、0.12~0.2%のCHXという薬液を一日2回1~2週間使ってもらう。普通に歯磨きができるようになれば、スパッとやめる。口の中の手術のあとには大変便利であるが、日本では残念ながらこの濃度のものは手に入らないし、副作用もあるので担当医の指示のもと、慎重に使用してもらった。

もうひとつは虫歯になりやすい人のリスクを減らすため。これは主にフッ化物が入ったものであるが、日本では一般には手に入らないし専門家がプログラムを作って計画的に実施するものである。

マウスリンスのほとんどは、虫歯や歯周病の原因のひとつであるプラーク(歯垢)の歯への付着や増殖の抑制作用を謳っている。つまり上に述べた「ケミカル・プラークコントロール」を目的としたものである。「抗プラーク(Anti-plaque)作用」という。抗プラーク作用をもつマウスリンスは多くある。世界的に一番認知されているのが、先に紹介したCHXというやつである。

日本でもCHXを含んでいるものがあるが、過去に重篤な副作用が出たりして、ものすごく濃度が薄くなっている。抗プラークを期待できるほどの濃度のものはない。また、他の製品は僕の知る限り効果はあるのだが、あえて使うほどか?と思う。普通にシャカシャカ歯磨きしたほうが早いし効果的である。

ならば「マウスリンス」を使う意義ってなんであろうか?歯磨きの後、マウスリンスを使うと気持ちいい。臭いも一時的に抑えてくれるので、ニンニクとか食べたあと、人に会わなきゃいけないときには便利。

なので、いまのところ日本で手に入る市販のマウスリンスは一時的な爽快感を得るため、と考えるべきである。

爽快感を得るメリットは人それぞれ違うので、そのメリットはデメリットを上回るか?はその人の考え次第だろうから、結局はマウスリンスの使用も個人の判断で用いるべきだと思う。

(週刊金曜日2006 大野純一著「歯生活を楽しくする歯科講座」より一部改変)

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