虫歯コラム
スウェーデンから「カリソルブ」という、虫歯を溶かす薬が紹介され、とても注目を浴びていた時期があります。
私もスウェーデンの病院時代に、開発者の先生から詳細な講義や、実際にカリソルブのトレーニングも受けました。現在でもよく使用しています。ただ源流で学んだ者として、ちょっと気になったことを書いておきます。
カリソルブは麻酔なしで虫歯を溶かし、詰めるだけの作業を行う治療法として、テレビなどのマスコミで紹介されたため、患者さんには若干の誤解と幻想を抱いている方もいらっしゃるようです。
とても便利な薬だと思いますが、私の意見はこうです。
実際どうなの?
私も診療室で使うことがありますが、私の経験を書こうと思います。
確かに麻酔の使う機会が減ると思います。ただし深い虫歯の場合には使用せざる得ない場合があることも確かです。それは治療前には断定できません。したがって、治療途中で麻酔の使用を決断することもあります。
カリソルブを使う場合、基本的に耳かきの先くらいの大きさの、ペン型の道具で虫歯を取っていきます。
確かに虫歯が溶けたような感じです。ただし、入り口の小さいが中で広がっている虫歯などでは、カリソルブをより効かせるために、入り口の部分をエンジンで削らなければならない場合が多いです。
入り口の広い虫歯は、そうなるまでには相当の期間がかかるため、すでに歯の神経の治療(歯内療法)が必要なケースが多く、カリソルブ自体適応ではありません。よって、削らなくてすむケースもありますが、「状況によって」という制限があります。
治療時間は通常よりも時間が掛かります。実感では1.5倍から2倍くらいでしょうか?
患者さんによっては治療時間の長さが逆にストレスになることもあるようです。
虫歯で穴が開いたケースでは、詰めて終了できる場合と、被せてクラウンを作らなければいけない場合があります。
前者で治療が終了するならば、カリソルブのメリットは大きいと考えますが、クラウンを作る場合ですと、カリソルブで治療しても麻酔下でその後、被せる形にエンジンで歯をデザインしなければなりません。使うメリットはないと思います。
つまり、「適応症がある」ということです。
これを守らないと、高額な治療費で中途半端な治療になりかねません。
私は以下のようなときにカリソルブが威力を発揮する場合と考えております。
子供の虫歯で、神経まで達してない場合は、麻酔やエンジンを使わないで治療可能なため、子供に受け入れやすく、とても便利なときがあります。
麻酔はある程度、血圧に影響を与えるので、心臓疾患等で麻酔が使いづらい患者さんでかつ、詰めて済むタイプの虫歯ではとても有効だと思います。
これに加え実際は治療時間、治療費(参考価格自由診療扱い¥20,000)の問題を総合的に考えて、カリソルブの意味があるかどうか?をカリソルブの治療を扱っている歯科医院でご相談してみることをお薦めします。