歯周病コラム
ブラッシングは歯周病治療の基本中の基本。それなくしては、決して治療の成功はありえません。
時たま、インターネットで相談メールを頂く方の中に、歯周病はブラッシングだけで治るか?という質問を頂きます。今回はこれに関して書いてみようと思います。
結論から言えば、治る歯周病もある、ということです。歯周病は歯肉のみに限局している「歯肉炎」と、骨にまで進行している「歯周炎」に分けられ、ブラッシングのみで治る可能性が高いのは、歯肉炎、そしてごく初期の歯周炎でしょう。
それ以上進行している歯周炎は?という質問に関しては、「わかりません」というのが答えです。
歯周病治療に関する患者さんの観察に基づいた研究はたくさんあります。しかしブラッシングのみを行って結果を観察した研究というのは案外少ないものです。
私の知る限り、最長で2年。これはブラッシングに加えて、歯科医師・歯科衛生士によるプロフェッショナル・クリーニングを加えております。専門用語でいう「歯肉縁上のコントロール」というヤツです。
結果は「細菌叢は変わる可能性がある」のみで、それが歯の保存にどの程度効果的かはわかりません。少なくとも、数ヶ月歯磨きをがんばっただけでは、結果は出ません。ブラッシングのみ何十年も続ければ治るのでは?と疑問にもたれるでしょうが、現代歯周病学ではまだその答えを出していません。
日本の歯周病治療に熱心な先生や、そういったことを推奨しているグループの先生方の中には治る!と言い切っている方もいらっしゃいます。
専門家間で議論するときの最大の問題は、何をもって「治る」と定義したかで、我々専門医では「アタッチメントロスの停止」(専門的過ぎるので、解説は省略します)なのですが、歯科医師によっては「腫れなくなった」とか「歯肉の色艶がよくなった」ということで「治った」と判断することもあるようです。
またどんな患者さんが来院するか?によっても、それぞれの歯科医師の考え方は異なります。
私のように、本当の重症な患者さんを見る機会があると、「腫れなくなった」とか「歯肉の色艶」だけでは症状なしで徐々に進行していってしまうケースも間々あります。
私が思うに、ブラッシングだけで治る患者さんは、それに越したことは無いけど、何十年も修行僧のように、厳密なプラークコントロールのみをおこなうより、歯科医師が行う専門的な治療(SRPや歯周外科)と組み合わせて、短期間に改善させたほうが、患者さんの生活の質を上げることになると思います。
そして最後は患者さんの選択でしょう。