フッ化物(フッ素)その1

予防コラム

フッ化物について、ちょっとビビりながら書く。
というのも、日本ではフッ化物の使用に関しては賛成派と反対派が激しい論争を繰り広げてきた歴史があり、今だに続いている。論争の中身についてはインターネットなどで容易にアクセスできるので、読者の皆さん自身で判断して頂きたい。

僕か感じた限りでは、いわゆる「XX論争」になってしまい、議論が泥沼化しているので、たぶん永久に決着しないだろう(←よくありがちだけど)。なので、専門家でない皆さんは両者の主張を比べ、直感で判断する以外にないと思う。

大切なのは予防方法にも選択の自由があることだと思う。ただ、現代の予防歯科学においてフッ化物は避けては通れないトピックである。

なぜフッ化物はカリエス(虫歯)の予防に効果があるのだろうか?
僕が学生の頃は、フッ化物は歯の内部に取り込まれ「フルオロアパタイト」という耐酸性の歯質が形成され、俗にいう「虫歯に強い歯」が出来ると教えられていた。

ところが、最近の予防歯科学の教科書や研究者らによる総説論文を読むと、歯の表面のフッ化物イオンが歯を「コーティング」していることが、主な機序とされている。口の中のフッ素イオンがデンタルプラーク内部の環境を変えたり、再石灰化を促進したりと(分かりやすく書くと)、口の中の環境を改善する効果らしい。

フッ化物がもっとも効果を発揮する条件は「低濃度のフッ化物(0.05ppmF以上)が、なるべく長時間口の中に残っていること」とされている。

それを目標として今日まで様々な局所応用の方法が検討された。近年、スウェーデン政府の諮問機関において、カリオロジー(虫歯の学問)の専門家たちがまとめた公式見解だと、最も科学的根拠の強いフッ化物応用法は「フッ化物入りの歯磨剤の使用」としている。

「低濃度、長時間停滞」のコンセプトにも合致しているばかりでなく、一緒に行う歯磨きでプラークを除去しているので、他の方法に比べて効果が高い理由であろう。

プラーク存在下ではフッ化物の効果が落ちるという研究があるからだ。フッ化物入り歯磨剤の使用は安価で誰でも出来るアプローチである。

(週刊金曜日2006 大野純一著「歯生活を楽しくする歯科講座」より一部改変)

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