理想の歯ブラシ

予防コラム

歯ブラシ

「歯ブラシはどんなのが良いでしょう?」
「どう磨けばいいのでしょう?」
「どのくらいの回数を磨けばいいのでしょう?」
―よく受ける質問である。

テレビでは各メーカーはいつも視覚効果満点のCMで新たにデザインした歯ブラシの宣伝を行う。次から次へと新しいデザインが出て来ると、じゃあ以前のデザインは何だったの、意味なかったの?とツッコミたくなる。

ちなみに予防歯科の専門家の間のコンセンサスとしては、こういうデザインの歯ブラシが一番!というものは存在しない。長い間市場で生き残っている標準的・常識的な歯ブラシならばどれでもいいと思う。

そうは言っても、診療室では特定の商品を薦めてあげると、患者さんは安心するようである。

そういう時には、僕の診療室では「バトラー#311(日本ではサンスター社が扱い)」を使ってもらう。とても平凡なデザインだけど、多くの人にとっては使いやすいと思う。

ここだけの話だが、歯周病治療で高名なあるドクターは、数年前まで温泉旅館で配られる歯ブラシを持ち帰り使っていた(ホント)。読者の皆さんはあまり神経質になる必要はないと思う。

磨き方

歯みがきはどのように、歯ブラシはどのように動かしたらいいのだろうか?
これまでに歯ブラシの動かし方については、様々な論議があり、何通りも開発され、それぞれ名前が付いている。ただ、どれも清掃効率に大差はなく、皆さんの信頼する歯科医院で指導してもらったやり方で構わない。

「この磨き方!」というものはないのだ。磨きすぎで歯肉(歯ぐき)や歯が傷ついたりせずに清掃できていれば何でも構わない。動かし方ではプラークの除去効率には大差はないという見解が現在は主流になっている。

ただ、まったく予備知識のない患者さんには「バス法」や「スクラッビング法」という方法をご指導している。

前者は歯周病専門医が世界的に、後者は日本の研究者が推奨している方法で、基本的に横方向にシャカシャカさせながら磨く。あまり強く押し付けると、清掃効率が悪くなるので注意。

歯みがきの間隔

どのくらいの間隔で歯みがきは行うべきなのか?
ヨーロッパの研究データでは、2日に一回の歯みがきで、歯肉の健康は保たれるとされている。

でもそれらの研究では、対象が歯学部の学生などで、しかも指導・チェックの下に歯みがきを行うため、歯磨きのレベルがとても高い。普通の患者さんとは違うので、2日に一回という頻度は現実的ではない。

そして歯ブラシの目的は歯周病のほかにも、カリエス(虫歯)の予防も目的としているので、歯みがきペーストの中にあるフッ化物の濃度・維持を考えると、一日2回(起床後と就寝前)の歯みがきが推奨されている。就寝前の歯みがきが特に大切だ。

交換の時期

なお、歯ブラシは、毛先がほつれてきたら交換の時期である。

最近の研究では毛先がもつれた状態でもプラークの清掃効果に影響ないとの結果が出されたが、実際に自分の口でやってみたら、いささかキモチワルイので、交換をお勧めする。

(週刊金曜日2006 大野純一著「歯生活を楽しくする歯科講座」より一部改変)

参考文献
Lang N.P, Attstrom R., Loe H eds. Proceeding of the European Workshop on Mechanical Plaque Control. Quitessence Publishing Co, Inc(1998)

歯科コラム一覧